千葉県の近代産業遺跡
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日本キリスト教団 九十九里教会 国登録有形文化財
山武市松尾町松尾60-1
木1
建築年 明治17年
設計者 ヘボン(アメリカ人)
施工者 地元大工
ヘボンは、九十九里教会の創立期である明治17年、
応援伝導のため松尾の地を訪れました。木造かわらぶき切妻屋根の教会堂の創建に
あたって、ヘボンは寄付金総額の三分の一にあたる200円を投じました。
それだけではなくヘボンは自ら設計図を引き、直接教会建設の指揮をとったの
です。教会堂の屋根は当時としては急勾配で、かわら職人がこわごわ作業にあたり、
また室内には柱を1本も使わないなどの指示に辟易し、棟梁が3人も替わったそうです。
当時は洋式建築は珍しく、「柱のない建物」といわれ、近所の人たちがわざわざ
見物に来たほどです。当時は松尾の地域までも広く「九十九里」と呼ばれていたので、
新しい教会も九十九里教会と名付けられました。
明治17年までに設立された県内の教会は五つありますが、九十九里教会はその内
の現存する唯一の教会です。現在の教会堂は床板や壁は改修されていますが、長椅子
などは当時のままです。建物そのものもまだしっかりしています。
教会創立時にキリスト教を信奉した人々には士族が多く、特に青年層は聖書研究
のかたわら英語の学習に情熱を注ぎました。彼等の集会はやがてミッションスクール
へと発展。人気のない静かな教会堂にたたずむと、当時の真摯な若者たちが背筋をの
ばしてこの長椅子に座り、熱心に牧師の言葉に聞き入っている姿が偲ばれます。
ヘボン式ローマ字による「和英語林集成」や「新約・旧約聖書」の日本語訳など
の完成に力を注いだヘボンは、明治44年、祖国ニュージャージー州で96才の長寿を全
うして昇天されました。(情報誌CANふるさと再発見より)